矢印

「Customers Voice」は、BORDERにご縁をいただいた大切なお客様に、経営に携わる背景や想い、そしてこれからの展望について、ざっくばらんにお話を伺う対談コンテンツです。
私たちにご相談くださる企業の規模や歴史は実にさまざまですが、向き合う課題の本質には、どこか共通するものがあります。

その内容は多岐にわたり、マーケティングや販促はもちろん、組織づくり、採用、人事、財務といった経営全体に関わるテーマが日々寄せられています。
このコンテンツは、そうした経営者のリアルな声を通じて、同じように悩み、挑戦を続ける方々の力になれたら——。そんな想いから生まれました。

撮って出し。ほぼノーカット。
ひとつの正解だけを追いかけるのではなく、さまざまな視点から語られる本音や葛藤を、そのままお届けしていきます。

構えず、気軽に。そして、ときにじっくりと。
あなたにとって何かのヒントや勇気になる対話であれば、これ以上ない喜びです。

プロフィール

三本珈琲代表取締役

三本珈琲株式会社 取締役 山本将人氏

慶應大学義塾大学総合政策学部を卒業後、
現在の(株)リクルートキャリア入社。
製造業を中心に200社以上の企業を担当し、広告・斡旋など幅広い採用支援に従事。2015年三本珈琲(株)入社。人事、営業、店舗事業の実務と並行して、理念/制度/社内システム刷新など、企業構造改革を推進。

横浜の地で創業66年。生豆の選定から焙煎、製造、販売まで一貫して手がける、国内屈指のコーヒーロースター 三本珈琲株式会社。
地元・横浜の老舗喫茶店はもちろん、全国に展開する飲食チェーン、さらに国内外の一流ホテルまで、同社の顧客は多岐にわたります。
中でもホテルとの関係性は特別です。
「あのホテルの朝に出会える、あの味」——。
そんな唯一無二の価値を実現するために、豆の選定から焙煎の深さ、配合比率に至るまで細部にこだわり、そのホテルだけの“顔となる味と香り”を設計しています。
一方で、伝統に甘んじることなく、味覚センサーによる味の数値化や独自の焙煎理論の開発にも挑戦。
クラフトマンシップと最先端技術を融合させ、顧客一人ひとりの細やかなニーズに応え続けています。
そんな同社の新たな進化を推し進めているのが、常務取締役・山本将人氏。
代々受け継がれる“職人の技”と“ものづくりの矜持”を引き継ぎつつ、変革の先頭に立つリーダーとして奮闘を続けています。
私たちBORDERもご一緒する中で、その決断力、バイタリティ、推進力に刺激を受ける毎日です。
本インタビューでは、山本氏が経営の現場で直面した課題や葛藤、そしてメーカーとしての在り方をどう捉え、どのように実行しているのか、その核心に迫ります。

市場認知率が低い中での、ビジョンとミッションの要諦

PHOTO by KEI ICHIKAWA

【西山】今までお伺いしていたご入社されてからの改革の流れで、三本珈琲さん自体のビジョンやミッション、哲学をロゴとかも含めて全部変更されたと思うんですが、なぜそれを行なって、具体的にそれぞれ決定されていったのかみたいなところを教えていただけますか。

【山本様】まずビジョン、ミッションとかって、ある一定の水準まで到達していて新しいサービスや価値を生み出すっていう組織においては私はすごく重要だと思ってるんですけど、もうすでに商売が成り立っていて、ただそれがくるくる回ってるだけで成り立ってる業界とか会社ってあるじゃないですか。

【西山】ありますね。

【山本様】うちはそれにちょっと近いところがあって、そういう会社にとってビジョン・ミッション・バリューとかって無駄とは言わないですけど、なくてもいいものなんですよ。捉え方で語弊があるとあれですけど、なくてもいいものだと思ってて。
なので、まずなぜ変えたのか、作成したのかでいうと、「会社が変わるよ」っていうことを社員に分かってもらいたかったっていうことがそもそもの目的です。
わかりやすくロゴが変わって、この先人事制度も変えるし、システムも全部変えるし、中のやり方も仕組みもメッセージも全部変えるよ、変わっていくよっていうことの危機感を醸成したかったんです。今あるものや組織の仕組みを変える時って危機感を醸成するのが最初だと思ってるんで。

【西山】ああ、これはなるほど。危機感を醸成するのがポイントってことですね。

【山本様】まず第一だと思います、それが。
変革とか変わるっていうことの最初は危機感持ってくれないと変わらないんで。

【西山】それって、いつその考え方に至ったんですか。

【山本様】そういうのは見よう見まねみたいなところはあって。
ビズリーチの、今社長やってる酒井さんって方がいるんですけど、リクルートで静岡の時の直属の上長だったんですよ。今家近くて。その人から色々学んでいる部分はありますね。
飲んだ時とかラーメン食べてる間に教えてもらったことみたいなのも含めて。
もちろんそれだけじゃないですが、例えばそういう方などから自分なりに解釈して生み出したものかもですね。

【西山】じゃあそういう一端が頭の中入ってて危機感の醸成を、危機感をあおるって言い方はあれですけど、そのためには新たに変わるっていう方向性を出しにいったっていう。

【山本様】はい。それがビジョン・ミッションを作った理由です。

【西山】なるほど。で、ビジョン・ミッション自体は外部の会社さんとやった感じですよね。

【山本様】そうですね。

【西山】あれはアプローチとしては、なんかこういうセッションみたいなことやって決めるっていうか。

【山本様】もちろん。12回ぐらい1年間かけて、月1回。1回の会議は2~3時間ぐらいでやってもろもろ私が起案したことをやりつつ弊社の会社に外部の方にも入ってもらって、一緒に。
何よりその先に僕はこういうことをしたい。だからこれをやるんだっていう前提で作ってくれたって感じです。
新しいもの作るっていうよりは、三本の歴史とか大事にしてきた価値観とか、そういうものを言葉にしようっていう、どっちかっていうそういう感じでした。

【西山】しっかり言葉にしていこうっていう感じですね。

【山本様】そうです。

【西山】これちなみに今のお話しは内部向けに近いっていう、そのための1個のアプローチみたいなお話だったと思うんですけど、これ対お客さんに向けてみたいな話でいくと、どういうブランドの価値観をつくっていきたい、与えていきたいみたいな話ってどうですか。

【山本様】今の会社をもう一回見つめ直してお客さんに対する価値でいうと、本当においしいコーヒーを出すっていうことのこだわりを持つために、それを実現するためには例えばこういう無駄を省かなきゃいけないとか、こういうことを変えなきゃいけないっていうものをちゃんと形にして見えるようにしましょうっていうことと、いろんな事業やってく中で他の事業もあるのに、うちのスローガン「コーヒーを、どこまでも」なんです。
それはコーヒーの事業をやってない組織からすると少し疑問になる。

【西山】え? みたいな感じになると。

【山本様】そうそう。でもそれを明文化したほうがいいと僕は思っていて。
だから結局他の会社よりも、やっぱりコーヒーをどこまでもっていう、コーヒーの本当においしい、コーヒーの力みたいものを、空間をつくる力だったりとかコーヒー自体の価値みたいなものをちゃんと高い状態で、もしくはそういうのをつくる。そのままお客さんに届けられるっていう会社に、よりなる必要があるっていう。
今そこに変わる必要があるなっていう。
じゃないと継続もできないし、あらゆるクオリティも上げられないなと思って作ったっていうのも、もう1つの理由でもあります。

【西山】だからそこは合いの子っていうか、ちゃんとそこも設計されてるってことですよね。

【山本様】はい。

【西山】じゃあそれを対カスタマー向けでいくと、こういった店舗だったりとか、三本珈琲店という店名を冠したコーヒーも新たに発売されましたが、それは内にも外にもメッセージとして出しているということですよね。

【山本様】そういうことになりますね。

メーカーとしての価値をいかにあげるか

PHOTO by KEI ICHIKAWA

【西山】今後、メーカーとしての価値みたいのを上げていくところってどんなアプローチ考えられてるとかありますか。店舗や商品の開発というのは当然あるとは思うんですが。

【山本様】正直分からないっていうのが本音なんです。
もちろんおっしゃるとおり製品として、例えば他社がロブスタ※ 使ってるところをアラビカにしてとかっていうのを、同じ値段で出す努力をするとか。そういうほんとにおいしいものを出す努力っていうのはやっていきます。
そういう製品だったり、店舗やサービスにもそういうものを表現していくというのは当然やっていくことです。

※主に国内流通しているコーヒー豆にはアラビカ種とロブスタ種があり、一般的にはアラビカ種の方が香り高く味が深いと言われる。ただしその分ロブスタ種より割高になる。

【西山】なるほどではよくあるブランディング〜みたいな部分にポンと乗っかり、変な部分で無駄使いするとかではなくまず。足腰の部分はやりながらっていう工夫が重要ですよね。
特に予算が潤沢にある大手さんと異なって踏むのか踏まないのかは、踊らされず自分たちで見極めが重要ですね。

【山本様】そうだと思いますね。もちろん決して地道な積み上げだけを礼賛してるわけではなく、意味があると判断すれば使うが重要です。

中堅企業が目指すべきポジショニングとは?

PHOTO by KEI ICHIKAWA

【西山】今の話にちょっとつなげると、結構強めの大手さんがいくつか存在している中で、御社独自のポジショニングが徐々につくられてきてる感じですが、今後も競合さんに対してどういう感じで立ち回りを考えてます?

【山本様】そこはやっぱり一貫してるんで、変わらず。
他社が味よりも価格だったりとか、また違う部分に価値を置いてやってるみたいなところにうちは変えず。やっぱり味第一っていうところで。ちょっと普段使いできるけど質が良くて少し高いみたいな、そのぐらいのラインの商品。ちゃんとした製品をしっかり広めたいっていう感じなんですよね。

【西山】なるほど、では御社としての要のポイントはやはり味の部分、品質の部分だと。

【山本様】そうですね。

【西山】分かりやすいですね。

【山本様】そのほうがシンプルで。シンプルにおいしいもの飲んでもらいたいっていう、ほんとにそこなんですよ。ちょっと相変わらずなんですけど(笑)
ほんとおいしいもの飲んでもらうとうれしいじゃないですか。おいしいもん知ってて、それを紹介する。食べてもらったりとか。それが自分が作ったものとかだったら、よりすごい喜んでもらえたらうれしくて、それがシンプルにありますよね。
ほんとおいしいコーヒーをもっと知ってもらいたいし、飲んでもらいたいなっていうのが源泉。

【西山】この話は前も出たかもしれないですけど、大手さんの場合って、やっぱり回さなきゃいけない商品群も多いし、予算も極端な話消化しなきゃいけないみたいな部門とかは、消化予算ウン千万とか。
そういう中で、たぶん一人一人に分解していくと結構おいしいものを届けたいとか、消費者に対していろいろ想いを持ってる方は当然多いし、いないわけじゃない。
でも、どうしても組織としてのくくりが大きくなると滲んでいってしまうところもあるんじゃないかと思ってて。
それでもある程度売り上げの大きさとか、どうしても規模感みたいのを高めようとすると、今の味へのこだわりとかお客さんへの提供って、結構シーソーになっちゃうみたいなところを、実際そうなってしまってるみたいな方々もいるなっていう印象もあって。
そこの規模感の考え方とか部分って結構出てくる話なんですけど、山本さんはどうそこら辺って捉えてますか。

【山本様】難しい質問ですね(笑)

【西山】結構難しいですよね。全てではないですが、局面で規模は当然必要じゃないですか。きれいごと抜きで利益は必要なので。それは組織のためもそうですし、利益は必要。
だけどある一定量の規模をやっぱり超えた時って、これがちょっと若干出てくるのもあるじゃないですか。

【山本様】優先するのは規模ではないです。
手段として規模は必要ですよね、どうしても。そこが目的にはやっぱりならないですね、基本的に。

【西山】手段として規模か。なるほど。

【山本様】効率が良くなるのは当然だし、ある程度の市場に対してインパクト与えられるかっていう規模も必要になってくると思うんで、そこはもちろんそれはそれで。結果的にそうなる必要があるのかなとは思いますけど。

【西山】手段としてっていうのはいいですね。例えば採用とかいろんな面においても、ある程度の規模感イコール認知率みたいなものが、当然いい回転を生み出す可能性が高いですもんね。

【山本様】それはありますね。

デジタルをいかに乗りこなすか

PHOTO by KEI ICHIKAWA

【西山】結構いろいろ聞いてきて少し細部の話なんですが、山本さん的にはECなどはもとより基幹システムなども含めたデジタルの活用の重要性ってどんな感じで捉えられているのかお伺いできますか。

【山本様】どっちかっていうとデジタルで攻めてデジタルで勝っていこうっていうような感覚はたぶんないと思いますね。たぶんそれは知識がないからですね。客観視できてるんで、自分を(笑)

【西山】ことコーヒーだと、そもそもそんなデジタルデジタルってわけじゃないですもんね。

【山本様】何のためにDXするんですかみたいな、何のためにこのデジタル活用するんですかっていうほうが僕は重要だと思ってるので、その目的のために必要だからやるっていうことですよね。
例えば、社内基幹システム全部入れ替えてERPとかにして情報の連携を取るとかっていうことは、それぞれの作業がやっぱ減って、かつアクションを取るのが早くなるとか、決算早くなるとか、それによって業務効率も変わって、業務フローも変わってっていう状態にしていくためにやったっていう感覚なんで。
どっちかっていうとERPを入れる、新しくしなきゃという目的ではなく、局所にかかる人件費を圧縮して、その差分で最適な人材を配置する費用に配分するのを見据えて構築を考えました。
そこまで目的を具体的に落とし込むことが重要ですね。

【西山】間違いないですね。目的を明確化してやるべきと。

【山本様】そうですね。その人数にするのも、何でじゃあ効率化して事務作業とか事務コストを減らすのかっていう、そこが先がないといけないと思うんです。

【西山】そこはゆるゆるの判断が多いケースがあるますよね。あるある過ぎて。。

【山本様】手段が目的化するのはあるあるなので、常に目的を明確化して先も見据えた意思決定をできるよう心がけてはいます。

Share on

URLをクリップボードにコピー
Twitterアイコン Facebookアイコン

関連の記事

Vol.5|未来と価値観:これからの展望とパートナー論

Customer’s Voice

2024.08.21

Vol.5|未来と価値観:これからの展望とパートナー論

「Customers Voice」は、BORDERにご縁をいただいた大切なお客様に、経営に携わる背景や想い、そしてこれからの展望について、ざっくばらんにお話を伺う対談コンテンツです。私たちにご相談くださる企業の規模や歴史は実にさまざまですが、向き合う課題の本質には、どこか共通するものがあります。 その内容は多岐にわたり、マーケティングや販促はもちろん、組織づくり、採用、人事、財務といった経営全体に関わるテーマが日々寄せられています。このコンテンツは、そうした経営者のリアルな声を通じて、同じように悩み、挑戦を続ける方々の力になれたら——。そんな想いから生まれました。 撮って出し。ほぼノーカット。…

Vol.4|マーケティング実務と現場マネジメントのリアル。予算なくとも成果を出す仮説力

Customer’s Voice

2024.08.21

Vol.4|マーケティング実務と現場マネジメントのリアル。予算なくとも成果を出す仮説力

「Customers Voice」は、BORDERにご縁をいただいた大切なお客様に、経営に携わる背景や想い、そしてこれからの展望について、ざっくばらんにお話を伺う対談コンテンツです。私たちにご相談くださる企業の規模や歴史は実にさまざまですが、向き合う課題の本質には、どこか共通するものがあります。 その内容は多岐にわたり、マーケティングや販促はもちろん、組織づくり、採用、人事、財務といった経営全体に関わるテーマが日々寄せられています。このコンテンツは、そうした経営者のリアルな声を通じて、同じように悩み、挑戦を続ける方々の力になれたら——。そんな想いから生まれました。 撮って出し。ほぼノーカット。…

Vol.2|信念と経営哲学:表面的な成功を追わない理由。「成果を出す人」の共通点とは?

Customer’s Voice

2024.08.21

Vol.2|信念と経営哲学:表面的な成功を追わない理由。「成果を出す人」の共通点とは?

「Customers Voice」は、BORDERにご縁をいただいた大切なお客様に、経営に携わる背景や想い、そしてこれからの展望について、ざっくばらんにお話を伺う対談コンテンツです。私たちにご相談くださる企業の規模や歴史は実にさまざまですが、向き合う課題の本質には、どこか共通するものがあります。 その内容は多岐にわたり、マーケティングや販促はもちろん、組織づくり、採用、人事、財務といった経営全体に関わるテーマが日々寄せられています。このコンテンツは、そうした経営者のリアルな声を通じて、同じように悩み、挑戦を続ける方々の力になれたら——。そんな想いから生まれました。 撮って出し。ほぼノーカット。…