Vol.2｜信念と経営哲学：表面的な成功を追わない理由。「成果を出す人」の共通点とは？

「Customers Voice」は、BORDERにご縁をいただいた大切なお客様に、経営に携わる背景や想い、そしてこれからの展望について、ざっくばらんにお話を伺う対談コンテンツです。
私たちにご相談くださる企業の規模や歴史は実にさまざまですが、向き合う課題の本質には、どこか共通するものがあります。

その内容は多岐にわたり、マーケティングや販促はもちろん、組織づくり、採用、人事、財務といった経営全体に関わるテーマが日々寄せられています。
このコンテンツは、そうした経営者のリアルな声を通じて、同じように悩み、挑戦を続ける方々の力になれたら——。そんな想いから生まれました。

撮って出し。ほぼノーカット。
ひとつの正解だけを追いかけるのではなく、さまざまな視点から語られる本音や葛藤を、そのままお届けしていきます。

構えず、気軽に。そして、ときにじっくりと。
あなたにとって何かのヒントや勇気になる対話であれば、これ以上ない喜びです。

プロフィール

横浜の地で創業66年。生豆の選定から焙煎、製造、販売まで一貫して手がける、国内屈指のコーヒーロースター　三本珈琲株式会社。
地元・横浜の老舗喫茶店はもちろん、全国に展開する飲食チェーン、さらに国内外の一流ホテルまで、同社の顧客は多岐にわたります。
中でもホテルとの関係性は特別です。
「あのホテルの朝に出会える、あの味」——。
そんな唯一無二の価値を実現するために、豆の選定から焙煎の深さ、配合比率に至るまで細部にこだわり、そのホテルだけの“顔となる味と香り”を設計しています。
一方で、伝統に甘んじることなく、味覚センサーによる味の数値化や独自の焙煎理論の開発にも挑戦。
クラフトマンシップと最先端技術を融合させ、顧客一人ひとりの細やかなニーズに応え続けています。
そんな同社の新たな進化を推し進めているのが、常務取締役・山本将人氏。
代々受け継がれる“職人の技”と“ものづくりの矜持”を引き継ぎつつ、変革の先頭に立つリーダーとして奮闘を続けています。
私たちBORDERもご一緒する中で、その決断力、バイタリティ、推進力に刺激を受ける毎日です。
本インタビューでは、山本氏が経営の現場で直面した課題や葛藤、そしてメーカーとしての在り方をどう捉え、どのように実行しているのか、その核心に迫ります。

小手先で儲かることに興味はない

【西山】その先の事業面みたいなアイデアでいくと、たしか最初お話しいただいた時にサブスクや顧客ごとのカスタマイズレコメンドだったりとか、そういう話があった記憶がありますが。

【山本様】あれは正直ちょっと逃げもあったんですよ、ぶっちゃけて言うと。
つまらなくて、毎日改善とか（笑）
そりゃ数字は出るしやったら絶対返ってくるので、本当に大切な基本ではあるんですが。
ただ、つまんないじゃないですか、やってると。だから途中でちょっと面白いこと1個ぐらいそろそろやっていいんじゃない、みたいな。

【西山】そういうことだったんですね。

【山本様】そうそう。
だから収益になるとは思わないけど、でもそれはどうなるか分かんないし、じゃあやってみるかみたいな感じでちょっと自分の趣味。

【西山】でも確かに今いただいたとおりでベースがしっかり上がってきて、今後そういう仕掛けも練っていきたいですよね。

【山本様】やっぱりやりたいですね。小手先は嫌です。そういうのには本当に興味がなくて。

【西山】そうですよね。

【山本様】本質的な商売をやりたいですよね。

【西山】やっぱり共通してる。本質的なものを重要視しますもんね。

【山本様】完全に西山さんもそうですよね。すごく感じてます、ビシビシと。
そうなんですよ。小手先で儲かるかなみたいなサービスとかってちょっとまねしたりとか、いくらでもあるじゃないですか。そういうのほんとにやる意味ないなと思ってて。

【山本様】コーヒーでやるんだったら、やっぱりコーヒーに関連するものでもいいし、無形のサービスでも。
うわこれ面白いじゃん、しかもそれがほんとにいろんな面の事業や環境、社会的なものや様々な課題感を解決できる、何かしらそういうことに価値があるし、自分自身も取り組みたいなと思いますね。

組織において成果の出せる人材の見極めと特徴

【西山】いやあいいですね。なんかビシビシいい話を頂いてるので、これは。
さらに別の話でいくと、元々人材の目利きのプロとして、やり切るとかそういう部分も含めて成果を出せる人の特徴などを見極めるポイントなども、もしあればお伺いしたいなと。

【山本様】そうですね。何個かあるんですけど大事にしてるのは、まずどれだけ修羅場を乗り越えてきたか。修羅場体験。

【西山】ああ、それは間違いないです。

【山本様】修羅場体験が結構人間の器を大きくしていて、それが僕は人間力だと思ってるので。
そういう修羅場体験をどれだけしてるのかっていうのは、まず一つ大事にしてることかもしれないですね。
あと推進するエネルギーやモチベーションのつくり方。
それは責任感でもいいし、自分がやりたい欲求を自覚してるからでもいいし、そういう推進するエネルギーがどれだけあるのかっていうこと。
頑張る理由はそれぞれいろいろあるでしょうけど、それがある方っていうのはすごく優秀だなと思う。

【西山】確かに。どういう方向性、それが自己的な欲求なのか、他者になのか組織に対してなのか何でもよくて、その力点がしっかりあるかどうかっていうのは結構重要ってことですよね。

【山本様】そういうことですね。

【西山】結構他の経営者の方からも聞かれるんですよこれは。やっぱりマーケティングにしても商品開発にしても、どの組織体にしてもやっぱり2対8の法則、パレートの法則が影響出てて。
その2割層をまずどうやって見極めるのかってことと、その2割層をどうやって自走させてくのかみたいなのは結構、経営層悩みあるあるというか。悩まれてる方が多いのかなとは思っていて。

【山本様】そうですね。あともう一つ加えると自分をどれだけ客観的に自覚できてるかっていう。
社会的な中での他人との関わりの中での自分っていう立ち位置をどれだけ把握できてるかというか。
それを理解できてる人は、やっぱりすごく頭がいいなと思われる人だと思うんです。

【西山】理解できてる人とは確かに。理解してて動く人と、理解せずにでも結果がついてくる、さっきの研究者の方じゃないですけど。その中間だと少し微妙になる場面もありますね。

元人材のプロが考える採用要諦とは

【西山】山本さんは元々人材系のプロだったわけですが、各社採用戦略には頭を悩ませる中で今後どのように採用していくかそのポイントとか方法論みたいなのって、どう考えてるのかお伺いしたいんですけど。

【山本様】難しい質問ですね。

【西山】例えば新卒がどうだとか、採用エージェントがどうだ何だとか、あれはもうディテール論じゃないですか。
というより自分が推進していきたい今の組織体の未来と今の現状と、それを把握した上でどういうふうに採用のアプローチをしてるのかなみたいのは、結構気になるポイントなんですよね。

【山本様】そんなにかっこいいものじゃないかもしれないですけど、少なくとも採用担当、これは自分に対してもそうですけど、一つ言えるのは、自分よりここは秀でてるなって思う人を採用すること。

【西山】それは確かに。

【山本様】そうそう。結局少しずつでも組織やチームは優秀になってかなきゃいけないっていうか、会社の成長って絶対そういうのがあると思ってて。
それで急に凄く優秀な人を入れても、やっぱり合わないんですよ。
それを少しずつ良くしていくためには、一つでも自分より優秀だなと思うようなところがある、もしくは絶対に自分より優秀だと思う人を採用していくっていう。
ただ駒で、こいつは少し抜けてるけど、すごくいいいやつで使いやすいから採用するとかではなくてっていう観点が基本は必要だなと思ってます。ただ、これはなかなか現場の責任者とか持ってないんですよ、みんな。

【西山】これはあるあるかもしれませんね。

【山本様】だいたい現場は素直で抜けてるけど頑張るってやつのほうが採用したがります。みんなそうです。

【西山】自分より優秀なポイントを見出して、優秀な人間を入れてく観点ってすごく重要だと思っていて。でもそれを現場がやり切れないっていうのもあるあるだと思うんですよね。それに対して山本さんはどうしているんですか。

【山本様】そこは正直完璧にできていないです。

【西山】なかなか難しいですか、そこはやっぱり。

【山本様】なので、ほんとはよくないんですけど、私が結局採用を全てみてます。

【西山】最終面接の見極めだけ山本さんということではなく？

【山本様】基本最終は僕ですけど、まず1次面接も僕だったんで、去年もおととしも。
というか日程調整が僕だったんです。採用担当がいなかったので、中途も新卒も1人でやってたんです。

【西山】すごいですね、それ（笑）
だって経営業務はもちろんのこと営業とかも先頭に立たれてますよね？

【山本様】全然できるんですよ。採用なんてそんな時間かかんないですよ。
結構、無駄な仕事をしてるんです採用担当って。本当に必要なことだけやってれば、1本釣りできる。

【西山】それはでも他の経営系の人たちは食らうかもしれないです。
そこまでやってる人いないと思うけど（笑）

【山本様】いやいやできます、全然。

【西山】すごいですね。

【山本様】単純な話なんで。

【西山】でも山本さん、ほんとうまいですよね、動き方っていうか。無駄を極限まで削って要所を外さない。

【山本様】単純なんで（笑）
もちろん経営観点で見ればマクロもミクロももっと重要度の濃淡はあるんですが、ある程度構築する前は人がいなければやるしかない最初は。
例えば新卒なんてリクナビ立てて説明会を、例えば月に2回とか来るじゃないですか。その4回同じシート使うだけでそれを2時間とかって組めばいいだけの話で。それをただ自分で話して来た人を日程調整して、もう1本釣りです。内定まで行くっていう。

【西山】言うは易しですけども。。。

【山本様】だけですよ。1次面接やって。大したことないです。

【西山】それやってる経営者っていないんだけど（笑）勉強になるな。

【山本様】結果そうなっちゃってるから、自分でカバーする。本当はよくないですけど（笑）

次回予告

Vol.3｜戦略とマーケティング：競合多き市場での挑戦。「知られていない」をどう超えるか？